メッセージ

3.11と『この国のかたち』 そして―「斃れてのち元まる」*1

2月18日、寒くも気持ちのいい午後、司馬遼太郎さんの命日にちなみ東京の日比谷公会堂で開催された第16回菜の花忌シンポジウム「3.11後の『この国のかたち』」
この日、シンポジウムに出席したパネリストの一人ひとりからこの国のかたちについて辛辣ではあるものの真摯な言葉が発せられました。

リーダーシップをはきちがえた輩が跋扈し、空疎な言葉だけが漂う中、『困ってるひと』の著者による「テキストが死に瀕している」*2という指摘には頷かざるを得ません。

一方で、南相馬の詩人の言葉と2012年の“Lemelson-MIT Invention Index” *3には想像と革新の力が満ち溢れています。

『神隠しされた街』 若松 丈太郎*4

4万5千の人びとが2時間のあいだに消えた
サッカーゲームが終わって競技場から立ち去ったのではない
人びとの暮らしがひとつの都市からそっくり消えたのだ
ラジオで避難警報があって
「3日分の食料を準備してください」
多くの人は3日たてば帰れると思って
ちいさな手提げ袋をもって
なかには仔猫だけをだいた老婆も
入院加療中の病人も
1100台のバスに乗って
4万5千の人びとが2時間のあいだに消えた
<以下省略>

「この詩と出会う読者はみんな驚嘆して、鳥肌が立ち、「予言だ」とささやきます」(アーサー・ビナード)*5と称された若松さんの想像力は似非リーダーシップと上っ面だけのコトバを打ち砕きます。

アメリカの若者が選ぶ革新者(Top inventor)の第1位はエジソン。第2位にスティーブ・ジョブズ。マーク・ザッカーバーグも堂々ランクイン。今の日本なら初音ミクと株式会社Kaienの鈴木慶太さん、フローレンスの駒崎弘樹さん?

注目されるのはテンプル・グランディン。その著書に登場する彼女の母親がテンプルに送った手紙の一節には革新と想像をそして「福島」をもつなぐテキストが感じられます。

「人間は私的な象徴でも努力の代替物でもなく、お互いに応え合う血の通った存在なのです。<中略>あなたも私も完成を目指す夢を持っており、その夢を分かつことで、お互いから学びあっているのです。」*6

かたや今を生きる私たちへの警告です。

「山本権兵衛という海軍省の大番頭は、かきがらというものを知っている。日清戦争をはじめるにあたって、戊辰以来の元勲的な海軍幹部のほとんどを首切ってしまった。この大整理はかきがら落しじゃ。正規の海軍兵学校出の士官をそろえて黄海へ押し出した。おかげで日本海軍の船あしは機敏で、かきがらだらけの清国艦隊をどんどん沈めた」*7

子規との対話の中で出てくる故郷の偉人、秋山真之の“感想”ですが今の一端を現すことにおいてこれほど正鵠を射た言葉もありません。

アメリカの軍隊には“Mission First, People Always.”という言葉があります。リーダーシップの要諦を説いた言葉とも言われ諸説ありますが、アメリカ空軍の公式サイトでは次のような解説を見ることができます。

If you take care of yourself and your family, you can focus on accomplishing the mission. *8

いまだ語られるべき言葉が見つからない中、私たちがやるべきことは―
想像力をもって、かきがらを削ぎ落とし、革新と希望に向け、身の丈から元めること。

そのうえで「人の心の奥底にある幸せに具体的なかたちを与える」(非電化工房代表 藤村 靖之さん)。*9
インタビューで述べられた藤村さんの言葉は、私たちの仕事の本質を突いています。
たとえばジョブズの偉大さは消費者が欲しいものをかたちにしたのではなく、コミュニケーションの力で消費者にiPhoneを自分たちが望んでいたものだと信じ込ませることに成功したことです。

それが商品であれ、政策であれ、私たちの仕事は、消費者や国民が何を望んでいるかを調べることではありません。
私たちの仕事は、心の奥底にある希望や欲求に光を当て、かたちを与えることです。
たとえば東北の「復興」。あるいはがれきの「受け入れ」。こうした問題を解決するためには旧来のメディアと合理性に軸足を置いた合意形成のコミュニケーションだけでは不可能です。

ソーシャル、スマートフォン、クラウド、スマート、これらのキーワードが解となることは確実です。
一方でソーシャルメディア コミュニケーションやソーシャル時代の戦略PRと言ったところでそれらは使い古された手法の上辺を取り替えたに過ぎません。
マーケットも少子高齢化の日本や一人っ子政策の弊害が出てくる中国にとどまらず、欧米はもちろんのことバブルを迎えつつあるミャンマーをはじめ新興国に目を向けなければなりません。

日本という国が「モノを製造して輸出する」*10という国からの転換を迫られているように、私たちの仕事も大きな転換を迫られています。
私たち自身、毎日が試行錯誤ですが、今こそコミュニケーションは企業の一業務や社会の一機能にとどまらず、それらが備えるべき能力としてインテリジェンスに基づき戦略を遂行する「武器」となるべきです。
その先に私たちの未来もあると信じます。

メッセージ(2011年秋)

“It's just that I have a message and will fight to the death for it.”

今やTwitterのフォロワー数が世界一、1000万人を超え、
世界No.1セレブと言われるレディー・ガガ。
「私には伝えるメッセージがある。そのために死ぬまで闘う」という言葉こそ、
私たちの使命であり、原点です。

3.11以降、日本は、語るべき言葉を失いました。
コミュニケーションをなりわいとする会社として、何ができるのか。
何をすべきなのか。
考えても答は出ません。

私たちにできること。
それは、伝えるメッセージを持つ組織や人のために、精一杯働くことしかありません。
これは、私たちにとっての「変わらないこと」。座標軸です。

そのために私たちが心がけていることは三つです。

ひとつは、「イマジネーション」。
既成概念にとらわれない想像力をフルに働かせお客さまに新しい価値を提供すること。

もうひとつは、「初心忘るべからず」。
能を大成した世阿弥の言葉です。
人口に膾炙した言葉ですが、実は、「常に新たな生を生き直す」という意味があります。
敷衍すれば、お客様のために努力・精進を怠らないこと。

三つめが、成果へのこだわりです。
お客さまにとっての成果は様々です。
私たちにできること、やるべきことは、成果のために挑み続けることしかありません。

語るべき言葉を失った世界においてこそ、
コミュニケーションには出来ること、やるべきことがあるはずです。

様々な課題と向き合うこと。
三つの心がけを持ち、課題に対して真摯に取り組み、結果を出し続けること。
その結果として、「ありがとう」と言っていただくこと。

そんな会社でありたいと願っています。